なんだ、君か

言葉というものは面白い

同じ言葉でも

発する人によって違う

 

同じ言葉でも

発する場面によって違う

 

人生みな平等と言っているが

間違いなく格差が存在する

 

街へ出れば

有名人に会っただとか

著名人に握手してもらっただとか

とある教授が言ってることだからだとか

 

このレベルまで来ると

どんな言葉を発したのではなく

誰がその言葉を発したのか

それがかなりのファクターとなる

 

ノンバーバル

非言語コミュニケーションが大事で

どんな言葉を

どのような表情で

どのような間で

どのような熱量で

 

伝わってくる振動がある

振動がココロとココロで共鳴しあい

共振を起こしていく

 

ワクワクする

興奮する

心拍数があがる

ピンと来る

直感的にイイと感じる

 

言葉という媒体を通して伝わるのは

文字通りの意味の羅列だが

それをコーティングしているのが

魂の振動だ

 

言霊というものは目には見えないが

振動でダイレクトに人の奥深くに届き

ものすごい振幅が起こる

 

たいていの人はわかっている

わかっているが

社会生活の中では

目に見える肩書きや社会的地位を

判断基準としているものだ

 

私が好きな島耕作というドラマで

とても好きな場面がある

たしか、香港編のスペシャルバージョン

 

競合他社とのコンペに臨む2社

CEOへの最終プレゼンを前に

島耕作の会社は劣勢だった

 

決戦を前に飲み屋から出てきた2社の人達

競合の人達は

自分達が優勢だと確信していたのか

上機嫌で酔いが回ってフラフラと歩く

 

そこにひとりの白髪老人のホームレスが

そのプロジェクトリーダーに声をかける

 

お兄さん、すまんが

1ドル貸してくれないかい?

 

すると

そのリーダーは

怪訝な表情を浮かべ

雑にあしらい

去っていった

蹴り飛ばしたような記憶もある

 

そこへ島耕作達が通りかかる

老人は同じように声をかける

 

すると、気持ち良く札を差し出し

優しい表情で老人と接した

 

次の日

最終プレゼンが終わり

結果が発表された

結果は、、、

島耕作の会社が受注を手にした

 

会長室に現れたCEOと対峙する耕作

髪や髭が整い

ピシッとしたスーツに身をかためたCEOは

オーラに満ちていた

 

会長室を後にする耕作に

会長が声をかける

 

おっと、返れてたものがあるから返すね、と

キレイな財布から出てきた1ドル札

 

ああ、あの時の老人がCEOだったのだ

 

この娑婆世界

確かに見た目を磨き

影響力があるとされる方との

時間を大切にしたいという

心理状態はよくわかる

 

だからといって

自分よりも下と見られる人に対して

見下したり、軽蔑した振る舞いを

してはならない

 

どんなに素晴らしい方も

有名人や影響がある方には

シッポを振ってしまう

 

私もされた経験があり

今の自分を鼓舞している

 

諸々の特殊な体験をして

78歳にして

背中がシャキッと伸びている老人と出会う

室内でもハットをかぶり

江戸っ子口調のその姿

銀幕スターのような香りがする

 

ある日

有名人が近くにいることがわかる

 

しかし

その老人の世代ではないので

最初はわからなかったようだ

 

老人と有名人、私

不思議な3人は

そのうち、菓子を食いながら

いろんな話をする仲になった

 

それから少しして

夕方のひととき

 

老人は家族に電話をしている

すると

声がだんだん大きくなっていく

何事かと思ったら

その有名人のことを家族は知っていて

大ファンだと言う

 

だからといって

その時は日常として

同じように喋りながら

お菓子をボリボリ

していた日々が流れた

 

そして

日常への回帰

 

娑婆で会いましょう

との合言葉を言い合って

一度、解散した

 

それからしばらくしたある日

 

私はその老人の言葉を聴きたくて

教えてもらった電話番号にかける

 

久しぶりに話せることもあり

私はウキウキしながら発信する

 

その老人が出る

〜さん、お久しぶりです。お元気ですか?

〜ですよ、〜です

 

耳が遠くなったのか

こちらの声が聞こえないようだ

 

一旦切れてしまった電話

すると

折り返しかかってきて

出ると、元気そうな嬉しそうな声で

 

〜さん、〜さん、〇〇です

〜さん、〜さん、〇〇です。お元気ですか

 

私は声を聴けて嬉しかった

しかし

呼んでいる名前が違う

 

私ではない

あの有名人の名を連呼している

 

私も

〜です 〜です お久しぶりです

〜ですよ、〇〇さん、〇〇さん

 

と必死に話している

 

すると、、、

 

なんだ、、〇〇さんか

 

とたんに暗い気持ちになり

電話を切ってしまった

 

あれだけ長い時間を共有し

深い関係を築けていたと思っていたのに

 

悲しい気分

いたたまれない気分

 

重く、短い言葉

1秒くらいのその言霊は

 

いまでも私を励まし、鼓舞している

 

成長せよ

励め

真摯であれ

まっすぐであれ

 

ヒカリ輝け